痛みの原因

「痛み」につていの今までの考え方

外科・整形外科などの現場では、腰痛や肩痛、首の痛みなどの原因は骨が変形するから痛い、神経が圧迫されるから痛いなどであるという考えが一般的です。

したがって、腰痛で整形外科などを受診すると、その理論から考えられる原因(椎間板や骨の変形など)を探すためにレントゲン、MRI、CTスキャンなどの画像診断を行います。

しかし、レントゲン・MRI・CTスキャンなどの画像診断をしてもどこにも問題が見つからなかったり、原因であるはずの椎間板の突出などをとっても治らない・・・などという話をよく耳にします。

実は腰痛の場合、骨の変形や神経の圧迫などが存在するのは全体の15%ほどで、そのほとんどが原因不明と言われています。

その原因不明の腰痛(全体の85%)は骨や神経が原因の腰痛に分類され、それに基づいた治療が行われている場合が多いのです。

また、原因がはっきりする腰痛のない健康な人の椎間板を調べたところ、椎間板の異常はごく一般的に見られ、むしろ椎間板の変性がある方が腰痛発生率が低いことが研究で報告されています。(Boden SD. et al : J Bone Joint Surg Am, 1990) (Jensen MC. et al : N Engl J Med, 1994)

また、もし骨の変形が痛みの原因であれば腰が曲がった老人はみんな腰が痛いはずですが、必ずしもそうではないことはおわかりになると思います。

これらを考え合わせると、一般に考えられてきた痛みの原因「骨の変形や神経の圧迫」が本当の原因ではない場合が多いと言えるのではないでしょうか。

「痛み」につていの新しい考え方

そこで近年、腰や肩の痛みは「筋痛症(強い筋肉痛)」が原因であるという説が注目されるようになりました。

これは今までの骨や神経の損傷が原因であるとする理論とは異なり、その原因を筋肉の炎症や痛みに求めたものです。

私たちの筋肉は意外に繊細で傷つきやすい性質を持っています。

姿勢の悪さや繰り返し行う動作などで起こる特定の筋肉の疲労は微小損傷を発生させます。そしてそれをそのまま放っておくとだんだんと硬くなり筋硬結に変化します。

この筋硬結は身体に歪みを引き起こし、その筋肉に関連した他の場所にも痛みが放散して腰痛や肩こりなどの症状として感じられるという筋痛症になるのです。

さらにニューヨーク大学のサーノ博士によって心の緊張によって筋肉が硬くなり痛みを起こすという「心因性の腰痛」も注目を浴びています。

アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドなどの海外では、すでに身体の構造的な問題にスポットを当てた「損傷モデル」から筋肉やストレスなどの心理的なものにスポットを当てた「生物・心理・社会的医学モデル」に考え方をシフトしています。

残念ながら日本の医療現場ではまだこの考え方のシフトは起こっておらず、従来の「損傷モデル」が主流を占めているのが現状です。

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